カフェを開業するためには、様々な法的手続きと許認可の取得が必要です。飲食店営業許可をはじめ、事業形態の選択、労働関連の手続き、税務手続きなど、開業前に確実に準備しておくべき法律手続きについて詳しく解説します。
目次
開業手続きのスケジュール
カフェ開業には、食品衛生法をはじめとする様々な法律に基づいた手続きが必要です。主な手続きの流れと必要な期間をご紹介します。
主な手続きのタイムライン
- 開業2〜3ヶ月前:食品衛生責任者講習会受講(1日)
- 開業1〜2ヶ月前:飲食店営業許可申請(2〜3週間)
- 開業から1ヶ月以内:個人事業開始届出書提出(即日)
- 従業員雇用時:労働保険・社会保険加入手続き(1〜2週間)
特に食品衛生責任者の資格取得は事前受講が必要で、飲食店営業許可の申請には設計図面の準備が必要になります。余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
必要な資格
カフェ経営者自身が取得すべき主な資格は以下の通りです。
- 食品衛生責任者:必須(各都道府県の食品衛生協会が実施する講習会を受講)
- 防火管理者:収容人員30人以上の場合に必要
- 酒類販売業免許:アルコール類を販売する場合に必要
飲食店営業許可の取得
カフェ運営に最も重要な許可が「飲食店営業許可」です。この許可なしにはカフェを営業することができません。
申請の流れ
- 事前相談:保健所の食品衛生課で設計図面を基に相談
- 申請書類の準備:必要書類を整理・作成
- 申請書提出:保健所に申請書類を提出し、手数料を納付
- 施設検査:保健所の担当者による現地検査
- 許可証交付:検査に合格後、営業許可証が交付される
必要書類と費用
- 営業許可申請書
- 営業設備の大要・配置図
- 許可申請手数料(自治体により異なるが、16,000円〜18,000円程度)
- 食品衛生責任者の資格を証明する書類
- 水質検査成績書(井戸水等を使用する場合)
施設基準のポイント
保健所の検査では、以下の基準を満たしているかチェックされます。
- 手洗い設備:従業員専用の手洗いシンク(温水、石鹸、ペーパータオル)
- 2槽シンク:食器・調理器具洗浄用
- 冷蔵・冷凍設備:温度計付きで適切な温度管理
- 換気設備:適切な換気扇の設置
- 採光・照明:50ルクス以上の明るさ
個人事業主と法人設立の選択
カフェ開業時には、個人事業主として始めるか、法人を設立するかを選択する必要があります。
個人事業主として開業
メリット
- 設立費用がかからない(開業届の提出のみ)
- 事務手続きが簡単
- 利益が少ない場合の税負担が軽い
デメリット
- 社会的信用度が法人より劣る
- 所得税が累進課税で高くなる可能性
- 経費として認められる範囲が限定的
法人設立
メリット
- 社会的信用度が高い
- 節税対策の選択肢が多い
- 責任の範囲が限定される(有限責任)
- 従業員の採用時に有利
デメリット
- 設立費用がかかる(株式会社約25万円、合同会社約10万円)
- 決算・申告手続きが複雑
- 利益がなくても法人住民税(年7万円程度)がかかる
その他の必要な許可・届出
カフェの営業内容や提供するサービスによっては、追加の許可が必要になる場合があります。
アルコール類の販売
酒類小売業免許
- 申請先:税務署
- 申請費用:30,000円
- 審査期間:約2ヶ月
- 条件:人的要件、場所的要件、経営基礎要件を満たすこと
深夜営業
深夜酒類提供飲食店営業届出
- 対象:深夜0時以降にアルコールを提供する場合
- 申請先:警察署(生活安全課)
- 申請費用:24,000円
- 提出期限:営業開始の10日前まで
音楽著作権
音楽利用許諾契約
- JASRAC(日本音楽著作権協会)との契約
- 年間使用料:店舗面積や利用形態により異なる(年間数万円〜)
- BGMや生演奏を行う場合に必要
労働・税務関連の手続き
従業員を雇用する場合は、労働関連の手続きが必要になります。
労働保険(労災保険・雇用保険)
- 加入義務:従業員を1人でも雇用する場合は労災保険への加入が義務
- 手続き先:労働基準監督署(労災保険)、ハローワーク(雇用保険)
- 保険料:労災保険料0.3%(事業主負担)、雇用保険料0.95%(事業主0.6%、従業員0.3%)
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
- 法人の場合:従業員を1人でも雇用すれば加入義務
- 個人事業の場合:常時5人以上の従業員を雇用する場合
- 適用除外:週30時間未満のパートタイム労働者、2ヶ月以内の短期雇用者
税務手続き
個人事業主の場合
- 確定申告(翌年3月15日まで)
- 青色申告の場合:65万円の特別控除
- 年間売上高1,000万円超の場合は消費税課税事業者
法人の場合
- 法人税の申告(事業年度終了から2ヶ月以内)
- 法人住民税・法人事業税の申告
- 従業員給与の源泉徴収義務
カフェ開業の法律手続きは複雑ですが、適切に行うことで安心して営業を開始できます。不明な点は各担当窓口に相談し、必要に応じて行政書士や税理士などの専門家のサポートを受けることをおすすめします。
次のステップとして、人材採用についても検討してみましょう。